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死亡交通事故・逸失利益6921万円(広地H10.1.23)

交通事故によって、後遺障害が発生し後遺症と認められると、その分労働能力が喪失し、将来的に得られる筈だった収入・利益の減少が考えられます。この減少したものが逸失利益といわれるもので、交通事故による損害賠償請求の1つの柱になります。逸失利益の計算式は、以下のとおりです。

①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数

事故で死亡した場合にも、後遺症の場合と同様に逸失利益の賠償が請求できますが、後遺症の場合と大きく異なる点があります。

まず、一方で、死亡の場合は当然に労働能力が0となりますので、労働能力喪失率の計算をする必要がありません(上記②は不要)。

その代わり、他方で、生活費控除を計算する必要があります。生存していれば必要であった生活費の支払を死亡により免れることになるので、その分を損益相殺として控除するということです。

 赤本(損害賠償額算定基準に関する弁護士必携の書籍)では以下のような類型ごとに原則的な生活費控除率が示されています。

・一家の支柱 被扶養者1人     40% 被扶養者2人以上 30%

・男性(独身、幼児等を含む。)   50% 女性(主婦、独身、幼児等を含む)30%

女性と男性とで20%もの差があるのは、男女間の賃金格差の是正を図っているからです。但し、男性と同様あるいはそれ以上の収入を得ている女性の場合には、男性と同様の生活費控除率を採用することもあります。

 今回紹介する事例は、基礎収入が高めと推測される、死亡時(事故時25歳)が若かった会社員のケースで、逸失利益額は7000万円近くになりました。

【事故時25歳の会社員(男性)の例 広島地判平10.1.23】

 逸失利益(退職金分を除く)約6921万円 生活費控除につき30歳までは50%、その後は40%で計算。

この事例に関し公表されている判決文から窺え、また、推測できる情報を整理すると以下の様になります。

・基礎収入:30歳まで平均500万円、31歳以降平均740万円(但し、この点については、公表されている判決文からは明らかでないことから、推測になります。)

・労働能力喪失期間:42年(基礎収入と同じく推測)

・事故時:25歳、独身(ただし、婚姻を前提として女性と交際中)

・原告(請求者):父母(被害者の相続人)

逸失利益の計算例は簡略化すると次のとおりです。

25~30歳 500万円×(1-0.5)×4.32955(5年ライプニッツ)≒1080万円

31~67歳 740万円×(1-0.4)×13.09(42年-5年ライプニッツ)≒5810万円

⇒ 合計約6900万円

この事例では、被害者は、ある女性と婚姻を前提とした交際をしており、存命であれば、遅くとも30歳までには同女と婚姻した蓋然性が高いという事情がありました。そこで、生活費控除を、30歳までは50%、その後は40%として2段階の計算を行って判断がされました。なお、子をもうけるか否かは不確定な要素が多く、生活費控除の前提にはされませんでした。

ただ、上記の判断には心情的に引っ掛かるところもあります。

賠償請求の原告は被害者の相続人たる父母でした。判決では将来の妻の生活を考慮して生活費控除を少なくしているにもかかわらず、その賠償金を実際に取得するのは将来の妻ではなく被害者の親だけなのです。親は子より先に亡くなるのが通常ですし、そもそも被害者が親を扶養していたというような事情もありませんでした。しかし、上記生活費控除によれば、将来の妻が受け取る筈の逸失利益を父母が取得してしまうことになります。

そもそも、通常父母は子よりも先に亡くなるので、例えば、父母死亡時点以降の子の逸失利益は受け取れない筈なのですが、子の67歳まで(基礎収入が認められる期間)の逸失利益全額を父母が受け取ることになってしまいます。いわゆる「相続構成」という枠組みの問題点です。

                                          以上

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