眼・後遺症(損害賠償総額1500万円)
眼の後遺症には、眼球の障害とまぶたの障害があります。眼球の障害には、視力障害、調節機能障害、運動障害、視野障害があります。
視力障害は、両目・片目・失明・視力低下という視点で類され、片目一眼の視力低下の場合に自賠責保険が定める等級・後遺障害慰謝料額は、0.02以下で8級819万円、0.06以下で9級616万円、0.1以下で10級461万円、0.6以下で13級139万円となっています。
以上を前提に、村上新村法律事務所が担当した交通事故(以下、本件事故といいます)を紹介します。
本件事故は、依頼者が自動二輪車を直進走行していたところ、交差点を右折する普通乗用車と接触・転倒したものです。依頼者は、右脛等骨折に加え(後日、後遺障害14級と認定)、本件事故の衝撃により右網膜動脈分枝閉塞症(右目網膜の動脈分岐が詰まる状態。以下、網膜動脈閉塞症といいます。)という傷害を受けました。依頼者は、仕事の必要性から、約2年に及ぶ眼科通院治療を受けていましたが、結局治らず、網膜動脈閉塞症により、右眼の視力障害が残りました。
視力障害については、後遺症診断時には、指数弁1m(0.02以下となる後遺障害8級に相当)の状態でした。視力は、定位置から視力検査表の文字等を見えるかどうかで計測しますが、一番上の文字等が見えない場合(0.1以下)は定位置から前に進んで計測(50cmまで近付いて見えなければ0.01以下)し、それも無理なら指支弁といって、間近に指を出してその数を数える方法による訳です(指支弁50cmが0.01)。
ところが、当初右目に認められたのは後遺障害9級(一眼視力0.06以下)でした。その理由は、眼科通院治療を続けていた後遺症診断を受ける半年前の視力検査(以下、半年前視力検査といいます。)では指数弁までの低下はなく、後遺症診断の時点でそこまでの低下が確認されたことから、症状の憎悪は事故によるものではない可能性があるというものでした。
しかし、依頼者には、事故の他に大幅な視力低下の原因となるものに心当たりがなかったことから、村上新村法律事務所で事情を確認したところ、依頼者は、仕事の必要性から、リハビリを重ね視力回復に努めようとし、視力検査でもよい結果にしようと十分見えない場面でも無理して答え努力したということでした。
そこで、村上新村法律事務所が、診療した医療機関に意見を聞くべく面談を申し入れたところ、後遺症診断時の医師は転任していましたが、後任者との面談を行い、視力障害についての意見を聴取しました。
その結果、半年前視力検査の際、同時に行われたOCT(眼科領域において主に網膜の断層像を撮るもの)画像上、網膜内層が劣化しており、それが視力低下の原因であり、その程度の劣化は、本件事故による右眼網膜動脈分枝閉塞症以外に考えられないことが一般的に明白だという意見を得ることができました。そこで、半年前視力検査の時点でも、視力低下していた可能性が指摘され、その意見をもとに異議申立を行った結果、視力障害は、視力が0.02以下になったものとして、後遺障害8級が認定されました。
自賠責保険で、後遺障害等級等を判断する機関(損害保険料算出機構)には、眼科専門医が少ないことから、当初の自賠責保険の認定は、画像データをよく分析せず、視力検査という形式的な結果を重視したのではないか、とも考えられます。
ただ、結果として、後遺障害慰謝料は200万円ほど増え、労働能力喪失率も35%から45%に上がって、治療費や休業損害を控除して1500万円程の損害賠償を獲得することができました。